リクガメを外で飼うための情報って結構少ないな……参考になるものはないか?
リクガメを屋外飼育してみたいけど、どういったことに気を付ければいいんだろう?
おそとを たくさん あるきたーい。
リクガメに限らず動物全般に言えることですが、多くのペット飼育者さんたちは、動物たちに「できるだけ広いスペースを用意してあげたいな」と思うものではないでしょうか?
私もその1人なのですが、家族5人が暮らす家の中ではスペースがかなり限られます。
かといってベランダや庭だと温度調整や脱走などの心配もあり、なかなか踏み切れずにいました。
ですが、いろいろと調べていった結果、できる限り低予算かつ比較的長持ちする方法で屋外飼育のスペースを作ることができたので、共有したいと思います。
屋外飼育を考えたきっかけ
我が家では、基本的に幅1mのケージで飼育をしています。
市販されているリクガメ用のケージは幅1mに満たないものが多いので、それらからすると大きいほうではあると思います。
ですが、リクガメが思い切り運動できているか、というとやはり十分なサイズではないように思います。
リクガメは案外動き回る量が多く、またその体型からどうしても立体的な動きよりも、平坦で広いスペースを歩き回ることになってくるんですよね。
リクガメの飼育スペースは甲長の5倍!?
また環境庁で公表されている資料によると、イギリスの法令ではリクガメを飼育するための最低限のスペースは「甲長×5倍の縦・横の広さ」とのことです。
※該当の資料は「提出資料2PEACE 東さちこ代表 動物取扱業における爬虫類の取扱いについて」
要するに、甲長が20cmのリクガメであれば「縦横1m」のスペースが最低限必要ということになります。
つまりそれだけリクガメは「動き回りたがっている」ということになるのかなと思うようになりました。
幸い、庭がある
リクガメが自由に動き回るためには、思っているよりもはるかに広いスペースが必要。
また、現在住んでいる我が家は築50年の古民家なのですが、そこまで広大ではないにせよ、10坪ほどの庭がありました。
さらに借家として借りているのですが、入居当時より大家さんから「好きにしていいよ」と超絶ありがたいお言葉をいただいていました。
さすがに植木を切ったりはできないなと思いながらも「これをリクガメ飼育に活かせる方法はないか」と考えていたため、今回実行に移すことにしました。
屋外に飼育スペースを作る計画
我が家の庭は、3方向を隣家をまたぐ壁に囲われています。
この庭をすべて開放すると、リクガメたちにとってはかなり冒険しがいのあるものになるでしょう。
しかし、さすがにリクガメが迷子になって見つけられなくなる可能性が高いので、以下の囲んだ部分をリクガメが自由に歩けるスペースとして区切ることにしました。
広さにして約150cm×450cm、決してリクガメ2匹に対して「広すぎる」ほどではないかもしれません。
ですが、100cm×42cmのケージと比較してその面積は約16倍。
これまでよりも自由に動き回ったり、何より「太陽の光」という最高のUVBライトを好きな時に好きなだけ浴びられるのは、リクガメにとっても良い環境といえると思います。
ということで、そのワンランク上の環境をリクガメたちに提供するために、と……
一旦先に完成形はこちら
ということで、「やったぞ!」の状態がこちらです。
黒い仕切りを外側に立てて、リクガメ2匹がそれぞれ安心して暮らせるよう、真ん中でスペースを区切りました。
この仕切りの材質はいったい何なのか!?それを踏まえてこれから詳しくお伝えしていきます(?)
メイン材料「あぜ板」
囲いを作るうえでの柵の部分は「あぜ板」をチョイスしました。
この「あぜ板」をチョイスした理由としては、以下4つの要素を重視。
- 価格が安い
- とにかく丈夫
- 加工しやすい
- リクガメが登ったり掘ったりしにくい
それぞれざっくりと利点をまとめます。
価格が安い
あぜ板は120cm×30cmのもので、ホームセンターで1枚300円ほどで購入できます。
今回はこれを10枚使用しましたが、それでも3,000円程度でした。
例えばすべて木材やコンクリートブロック、金属の柵などで同じスペースを囲おうとすると、3,000円に納めるのは相当無理があるのではないかと思います。
また、こういったペットサークルを元にすることも考えたのですが、やはりそれなりに予算もかかります。
とにかく丈夫
あぜ板はもともと、田んぼと畝を分けるために用いられるものです。
田んぼの大量の水と土をせき止めるために、かなり頑丈な作りになっています。
さらに、耐候性も高い上に耐用年数は10〜15年あるらしく、木材で作るよりも長持ちしそうです。
加工しやすい
このあぜ板は樹脂製なので、大きくてもけっこう軽いです。
スリットがついているので、あぜ板同士を繋げて伸ばしていくことができます。
これをそのまま丸く繋いで小さな畑のように土を入れて使用する方もいます。
後述しますが、熱を加えることでほぼ90度に折り曲げたりもできます。
自由度が高いのはそれだけで強みですね。特に私のようなズボラにとっては。
リクガメが登ったり掘ったりしにくい
もう一つ重要なのが、リクガメの脱走に関することです。
リクガメの屋外飼育において、気をつけるべき脱走ポイントが2つあります。
それが、「登って逃げる」と「掘って逃げる」です。
リクガメは爪が引っかかるところであれば、意外とどこでも登ります。
特に、コンクリートブロックのようなザラザラした材質だと、ほぼ垂直の壁でもコーナーをうまく使って結構な高さを登ることもあります。
しかし、あぜ板は樹脂でツルツルしているため、リクガメの爪が引っかかることはありません。
また逆に、柵や塀の下を掘って脱出することも考えられます。
特に、同じチチュウカイリクガメ属のロシアリクガメは深さ1mに達する穴を掘ることもあるそうです。
ですが、個体差はあれど我が家のギリシャリクガメは甲羅が隠れるくらいの深さまで掘れると満足のようです。
そこでこのあぜ板を10cm程度地面に埋めることで、脱出する可能性はかなり減らせる見込みです。
そのうえで万が一、囲いから出てしまっても庭から外には出られることのないよう、別途対策をしています。
工程の紹介
ではあぜ板を使って囲いを作っていきましょう。
といっても、工程自体は大変シンプルです。
ざっくり言うと、場所を決めて溝を掘り、あぜ板を埋めていくだけ。
でもせっかく(がんばったこと)ですし、細かくまとめていきたいと思います。
囲いを作るエリアのイメージを決める
まずはあぜ板を置いてみて、スペースを確認します。
縦と横、だいたいの長さを確認していきます。
あぜ板の90℃曲げ加工
おおよその場所が決まったら、必要に応じてあぜ板をこのように曲げていきます。
コイツを使って。
あぜ板は樹脂製なので、熱を加えることで曲げることができます。
本来は作業用の手袋をすべきなのですが、見ての通り私はたくましい腕をしているのでそのまま素手でやりました(?)
あぜ板はそのままでもある程度しなるようには曲がるのですが、無理な力を加えると折れてしまいます。
そのため、今回のように直角に近い角度にしたければ、このように熱を加えると話が早いです。
雑草やブロック等、不要な物の除去
リクガメに有害な雑草や、不要なものを取り除いていきます。
まずはこれ、ニラです。
庭に自生していたのか、大家さんが植えていたものが野生化したのかはわかりませんが、リクガメにとってネギ科の植物は毒です。
さらにこのニラ、春に水仙のような花を咲かせていたので調べたところ、ニラはニラでもハナニラ(イフェイオン)という種類らしく、人間も食べられないとのこと。ほなどっちみち抜こか!!
ハナニラは根っこから分けつして増えていくようなので、できるだけ根元からごっそり抜いたつもりですが、素人が1~2回除去したくらいで根絶できるとは思っていません。
ここは日々の観察を怠らず、早めに対処していくことにします。
それから、よく見る植物としてオシロイバナも実は要注意です。
こいつはそこそこ群生してて葉っぱも柔らかいのでリクガメのエサによさそうですが、全草に毒があります。
花には毒がないそうなのであげてもいいんですが、別に「わざわざ」って感じですね。
次はドクダミ。
ドクダミ自体に毒はありませんし、実は人間も生で食べられます(個人的には気は進みませんが)。
ただリクガメが食べていいかどうかについては、どこを調べてもハッキリしたことは書いてありません。
一説によるとカルシウム分が豊富らしく、おそらく食べすぎなければさほど問題ないかとは思いますが、めちゃくちゃ増えて邪魔なので除去。
なお、ドクダミは酸性かつ栄養がない土壌に増えやすいらしいので、後述しますが地面に石灰を加えてphを中性に近づけていこうと思います。
シダも抜いていく。シダはリクガメが食べると「シダ中毒」という病気になるようです。
草食恐竜とかこういうの食べてたし、リクガメも恐竜みたいなものだから食べそうではあるんですけどね。
次はちょっと脱線して、こちらは「マルス・シルウェストリス」という、リンゴの原木と言われている木です。
庭に植えてあって毎年実をつけるのですが、ものすごく酸っぱいらしく人間が食べるのには向いていない模様。
でも、リクガメも現地では落ちた果実なども食べるそうなので、デザートとして食べないかな、と期待しています。まだ食べているところは見ていません。
雑草をある程度処理したら、ブロックをどけていきます。
このまま使用することも考えたのですが、限られたスペースをできるだけ広く使いたいのでどかすことにしました。
また、下の画像のとおり、ブロックが埋まっているところはすでにちょうどいい深さに掘ってあるので、この深さを基準にあぜ板を埋めていきます。
あぜ板の埋め込み
そんなこんなで、シャベルで土を掘っては、あぜ板を順次埋め込んでいきます。
途中、予想よりも木の根が邪魔をして真っすぐに埋められないところも、あぜ板の柔軟性により華麗に回避。
普段、農作業などを行わない方はあまり想像することもないかもしれませんが「土を掘る」というのはけっこう重労働です。
「暴力脱獄」という映画では、主人公が罰として「地面を掘って、埋める」という生産性のない作業をさせられて精神的に参ってしまうシーンがあります。
確かにこんな作業を、目的もなくただ繰り返すだけならそりゃあ狂うわな、と思うくらいには重労働です。
そんなことを考えながら約2時間、なんとか囲いのあぜ板をすべて埋め終わりました。
本当は水平を取ったり角度をキッチリしたりするものなのかもしれませんが、この時点で私のエネルギー残量が切れかけて(1リットルくらい汗をかいて)いたのでそこはもう重視しませんでした。
スペースの整地・種まき等
可能な限り、現地の土壌に近づけたいということで、地面には目安の量よりも少し多めに有機石灰を撒きました。
完全に再現はできませんが、ギリシャリクガメのいる地中海周辺は、カルシウム分を豊富に含んだテラロッサという土壌が中心です。
世界の土壌の多くはもともと弱酸性なのですが、雨や排せつ物などの有機物によって、だんだんと酸性に傾いていきます。
そこで、アルカリ質である石灰を多めに含ませることで酸性に傾け過ぎないようにします。
また、余っていたぼら土と赤玉土も混ぜました。
せっかくスペースがあるので、リクガメが好きな時に食べられるよう、エサとなる植物を植えてもいいかもしれないですね。
あぜ板サークルのリクガメ庭、完成
後は、シェルターやエサ皿などを配置して完成です。
スペースの真ん中にプランターで仕切りをして、それぞれ左右に1匹ずつリクガメたちを住まわせることにしました。
もともとは1つの広い空間で、隠れ場所をたくさん用意したら2匹とも同じ空間でも暮らせるんじゃないかと考えたのですが……
このスペースに放して30分後には「きなこ」が「よもぎ」へコンバットし始めたのですぐやめました。やっぱオス同士の同居は難しいですな。
なお、画像やや右側の黒い三角形のものは、「屋根の真ん中の瓦」です。
どういうわけか家に余っていたので、シェルターとして使いました。結構気に入ってくれてるみたいです。
課題・懸念点
ここからは今後の課題、飼育していくうえでの思いついた懸念点をまとめていきます。
「リクガメを外で飼う」ということは、必然的に目を離す時間が屋内よりも増えるので、心配事はいくつか先んじてつぶしておく必要があります。
日向・日陰について
リクガメにとって日光浴は大事ですが、同じくらい日陰も大切です。
あまり太陽の位置と気温が高い場合は、リクガメは日陰でじっとしていることが多いです。
というのも、以下は9月のとある日の一番気温が高い時間帯ですが───
地面は39℃近くあります。これだけ暑いと日光浴が好きなリクガメとて長時間日向にいるのは大変危険です。
同じ時間での日陰はというと―――
気温が低い日陰で約30℃。これでも暑いですが、変温動物のリクガメにとっては土を掘ったりして暑さをしのげる範囲かと思います。
このように「常に日陰」の場所を作っておかないと、いざというときにリクガメが隠れることができず、命に関わるかもしれません。
水はけ・水没について
今回はあぜ板で柵を作りました。
あぜ板は加工面、価格面などで大変優れたものなのですが、元が田んぼの土や水をせき止めるものです。
そのため、あぜ板を埋めてしまうとその周辺の水はけが悪くなるのではないかという懸念はありました。
ただ、この点については、思っていたよりも我が家の水はけがよく、目に見える豪雨でもほとんど水たまりもできませんでした。
しかし、屋外飼育のスペースをどこに作るかにもよりますが、突然の大雨でもリクガメたちが水没してしまうような環境ではないか注意したいところです。
またあまりに水はけが悪いと、特にチチュウカイリクガメ属と言われる乾燥系リクガメたちだと、体調を崩しやすくなってしまうかもしれませんね。
ちなみに、その時の豪雨の際は、30℃超えの気温が雨によって下がったからか、むしろリクガメたちは運動量が増えているようでした。
脱走について
あぜ板はリクガメの爪が引っかからないので、登りにくい材質です。
反対に、あぜ板を土に埋めておけば、それなりに土を掘っても外には出にくいかと思います。
それでも脱走については細心の注意を払う必要があります。
我が家ではこの囲いを作り、万が一、囲いから出ても庭そのものからは出られないように対策をしています。
それでも、リクガメの「ステルス力」は人間が思っているよりもはるかに高く、見失ってしまうこともあるかもしれません。
例としてクイズです。この写真「よもぎ」がいるんですけど、どこにいると思いますか?
答えは……
・
・
・
ここです。
近づくとようやくはっきり見えるのですが、甲羅の色が地面と影の色にうまく同化してるんだな、と感心しました。
そのため、一度この囲いの中からでも脱走すると、見つけるのに相当苦労するかもしれません。
猫・カラスなどの害獣対策について
今回作成した囲いには、屋根や防獣ネットなどはつけていません。
迷いましたが、もともと植えられている木などの景観と、リクガメを観察しやすいようにしたいという点からそのままにしました。
我が家は閉鎖された庭であることと、ときおり野良猫が庭に遊びに来ることもあるのですが、ずっと同じく野外で暮らしている「ぼた」に何もトラブルが起きたことはないのも理由です。
また、先日もいつものように(?)野良猫が遊びに来ており、柵があるとはいえすぐ近くに両者が出そろいましたが特に何事もなく去っていきました。
もちろん、だからといってこれからも絶対に安全とはいえないので、異変などがないかは日々観察していこうと思っています。
終わりに:大地を歩くリクガメは見ごたえ抜群
屋外飼育用の囲いを作りました。
作り自体はシンプルなものではありますが、労働量はかなりのものでした。
ただ、リクガメがのびのびと動き回れるスペースがあり、それから人工の光ではない太陽の光を浴びられる環境は、よりリクガメ本来の生態に近いのではないかと思います。
狭いケージ内ではあまり見ることはできませんが、広い陸地を歩くリクガメはけっこう「早い」です。
まだまだ改善の余地はありますが、今の人間側の都合で用意できる範囲では、なかなかいい感じだと自負しています。
リクガメ飼育については、皆様それぞれの「スタイル」があるものですが、これも1つの方法として受け取っていただけたら幸いです。
ではまたまた~ノシ