リクガメを飼育するにあたり「ほうれん草」は与えてはいけない、と言われますよね。
というのも、ほうれん草に含まれる「シュウ酸」がリクガメにとって「結石の原因になり得るから」だ、というのが通説です。
結石はリクガメの病気の中でもメジャーなので、飼育している方であれば知っているという方も多いでしょう。
だたこれ、言っちゃうと「シュウ酸」そのものはリクガメにとって結石の原因ではないと言われています。
とはいえ私みたいな素人が言ってるのも説得力がないので、お医者様の言っていることを先に引用しちゃいますね。
リクガメの結石の原因はあまり研究されていないため、今のところ、タンパク質の過剰摂取と脱水という情報が有力だ。タンパク質を採ると尿酸が増える。尿酸は、体内の水が少ないと濃縮される。はじめは小さな結石の核が、次第にアコヤガイの中の真珠のように雪だるま式に大きくなるわけだ。
田向健一. 珍獣の医学 より
ということで、リクガメの結石はシュウ酸ではないと見られています。
ただ、だからと言ってほうれん草をバンバンあげていいのか、というとそれも違います。
「結局何を言いたいんだ!」というと、こういうことです。
どういうことかというと、順に説明していきますね。
「シュウ酸」とは?
シュウ酸は、ほうれん草やタケノコなどに多く含まれている成分です。
このシュウ酸は、カルシウムと結合し「シュウ酸カルシウム」となります。
人間の場合、シュウ酸カルシウムは大部分は便と一緒に排泄されますが、カルシウムを摂る量が少ないと尿の中に結晶として溜まっていきます。
これが「尿路結石」ですね。それが膀胱や尿道を傷つけることで激痛を伴うとか。
なったことないんですが、「ヤバい」らしいです。父が言ってました。
はい、ここまでは完全に人間の話になってしまったのですが、この「カルシウムと結合」することがリクガメにとってはとても重要ですね。
「シュウ酸」はカルシウムの吸収を妨げる
「シュウ酸」はカルシウムと結合し、便として排出される。
そしてリクガメは体の大部分を占める「甲羅」もあることから、成長には多くのカルシウムが必要。
ということは、シュウ酸を摂りすぎているとリクガメはカルシウムを吸収できず、常に不足状態になっちゃうんですよね。
人間なら牛乳とか小魚などの動物性のものからも積極的にカルシウムを摂取できるので、そうそう好き嫌いしなければ事足りるかと思います。
ですが、リクガメは基本的に草食の種が多いですし、飼育下ならなおさら野菜やフードが主になっているのではないでしょうか。
そのため、ある程度注意を向けなければいけないポイントだと考えます。
カルシウムを多くあげることで不足を回避!
シュウ酸とカルシウムが結合すると、カルシウムを十分に吸収できない可能性がある。
であれば答えは簡単なのですが、シュウ酸がカルシウムと結合しきっても、リクガメが栄養として必要としているカルシウム分を上回っていればいいんです。
目安は「カルシウム2:シュウ酸1」まで!
シュウ酸よりカルシウムを多く与えればよい、ということなんですが、「じゃあどれくらいあげればいいのん?」と思うことでしょう。
これ、「おかきちゃんねる」さんでわかりやすく答えが出てました。「科学」を語れる人って憧れますよね。
きっとこのブログを読むより勉強になります。
ざっくり言うと「カルシウム2:シュウ酸1」までくらいの割合であれば大きな問題にはなりにくいと考えられます。
どんなエサにシュウ酸は多いの?
「カルシウム2:シュウ酸1」って言われても、じゃあ一体どうすればいいの……?
リクガメにとって、シュウ酸そのものはカルシウムの吸収を阻害するもとになる。
だから、シュウ酸と結合しても余りあるカルシウムを与えていく。
ということはわかりましたが、じゃあどんなものにシュウ酸が多いのか。
代表としてほうれん草と小松菜のシュウ酸の量をベースに、リクガメにも与えられる野菜を一部ピックアップします。
名前 | シュウ酸(100g中) |
---|---|
ほうれん草 | 800mg |
バナナ(あまり熟していないもの) | 500mg |
モロヘイヤ | 400mg(諸説あり) |
レタス、キャベツ、ブロッコリー | 300mg |
パセリ | 170mg |
小松菜 | 50mg |
大根の葉 | 45mg |
ほうれん草パイセンはさすがの800mgだとして、モロヘイヤやレタスなどにもそれなりのシュウ酸は含まれているんですよね。小松菜はかなり少ない部類です。
このデータから何がわかるかというと「案外いろんな野菜にシュウ酸って入ってるんだな」ということなんですよね。
「キャベツとかブロッコリーとかってリクガメにどうなん?」という方は、こちらもご参考くださいませ。
あらゆる野菜・野草にもシュウ酸は含まれる
一般的に「シュウ酸が含まれている」と言われている野菜や野草はけっこう多いです。
数値としてちゃんとしたデータは見つからなかったのですが、トマトやオオバコといった、リクガメにもよく与えられる野菜や野草などにも多く含まれていると言われます。
データを使ってドヤりたいタイプなのであまりデータのない話はしないんですけど、シュウ酸はいろんなものに入っている、という前提で構えておくのが良いですね。
大切なのは「十分なカルシウム」
基本的に「シュウ酸が多いからダメ」ということではなく、それを上回るだけのカルシウム分を与えれば良いので、やはりカルシウムパウダーなどで補うことが必要になります。
そもそも、日本とリクガメ(主にチチュウカイリクガメ)が住んでいる場所では、土壌が全く違います。
ヨーロッパ周辺は、石灰(カルシウム)が豊富に溶け込んだ土質をしており、水もミネラルを多く含んだ「硬水」です。
対して日本は、火山と雨が多い影響で、土壌からカルシウム分が不足しやすい環境といわれています。
一説には、日本の河川のカルシウム含有量はヨーロッパの約1/4だとか。
その土壌から育った野菜は、必然的に地中海周辺のそれとはカルシウムが少なくなるのは当然ですよね。
なので、やっぱり日本産の野菜・野草だけだとカルシウムが不足してしまうので、エサに混ぜて与えたほうが良いです。
「でもパウダーかけると食べないのよネ……」という方は、こちらがおススメです。
うちでは(ありがたいことにパウダーかけても普通に食べるので)まだ使ったことはありませんが、こちらは「どうしても食べなかったけどこれなら食べた!」と評判もいいです。
エサについて基本的な説明はこちらから。
「どのくらい増やせばいいか」ということについては、食べるのであれば「ちょっと多いんじゃないかな」くらいでもいいと思います。
盛り塩みたいにしたらさすがにダメですけど(そもそも食べない)。
終わりに
「シュウ酸は結石の原因ではない」ということをスタートに、「カルシウムたくさんあげよう」という話に持っていきました(?)
シュウ酸が直接リクガメの病気の元とはならないと言っても、バンバンほうれん草をあげてもいいんだな、とはならないことがおわかりいただけたかと思います。
シュウ酸やカルシウムやその他栄養をバランスよく与えるためにも、できるだけ偏らせずにいろんなエサをあげつつ、ベースとしてカルシウムを多くするよう心掛ける。
この基本は変わりませんが、シュウ酸=「直接的な毒ではない」ので、あまりこだわりすぎずいろんなエサを食べさせてあげてくださいね。
ではまたまた~ノシ