自由度の低い業務委託
先輩が退職したことを悟ってからは、心の中の暗雲が日に日に増していきました。
もちろん「他人のことは関係ない。自分達は自分達の人生を生きている。」というようなポジティブな気持ちに置き換えれば、同僚の一人や二人辞めたところで何も意に介さないのかもしれません。
それでも実際、4か月働いていて、いつの間にか私自身も古株。
新しく入ってきた人がいても、一か月はおろか一週間も持たずいなくなっている。
「まぁ、この仕事は正直生半可な気持ちでは続かないよね。」そういう気持ちも確かにありましたが、まさか信頼していた先輩がいなくなるとは思っていませんでした。
しかし、そう沈み込んでばかりもいられませんでした。
「そもそもついて行けるのは一部の人だけ。その中で成功するのはそれよりもほんの一握りの人だけ。」
そういう気持ちを無理やりでも持って仕事に臨まないといけません。
なにより自分もなんとか生活費を稼ぐことを続けないといけません。
ただ、この頃から「ブースだけで呼び込みをして営業をする」ということに少し限界を感じていました。
あくまでもブースは固定配置なので、そこから範囲を広げることもできず、平日や閑散期になると人通りもまばらになります。
なんなら週休一日も必要ない。
まずはきっちりと安定した成果を上げるために少々の無理をしたっていい。
「個人だけを対象にするのではなく、せっかくオフィス街なのだから法人を対象に営業をするのはどうか。」
そのことを社長に(もちろん「売れないから」というネガティブな気持ちではなくもっと成果を伸ばすため、というポジティブな言葉として)伝えたところ、
そういった理由で自分の考えはやんわりと断られました。
その当時は「業務委託契約」というのは今以上に知識がなかったのでそのまま刀を鞘に納めましたが、働く場所を制限されていてかつ拘束されている時間が決まっている。
この環境を一般的には「時間給の労働」と呼ぶのではないかと思います。
しかしこの時はここまでの疑問を持つことはなく、また自腹の交通費をかけて遠方のブースへと出かけていきました。
変動費を抑える為の施策
またこの頃、冗談でもなんでもなく、本当にお金がありませんでした。
酒などの嗜好品はもちろん、そもそも一日に使えるお金は500円もありません。
しかしながらブースの準備は力仕事だし、普段も立ちっぱなしであったりしてエネルギーを使います。
どうしてもお腹も減ります。
幸いなことに私の祖父母の家で自分達で食べる分のお米を作っていたので、米だけはありました。
少なくとも米だけでも食べていればなんとか腹持ちもします。
また、ブースは基本ショッピングモールやホームセンターなので、食事をとるときは従業員用のバックヤードがありました。電子レンジもあります。
ただ、もちろんおかずはありませんし、夜帰るのは21時から22時過ぎ。朝は6時には起きて家を出ないと7時のミーティングに間に合いません。
そこでどうしたかというと、塩にぎりや100円で買えるおにぎりの素を買ってきて米を五合炊いて混ぜてラップに包み冷凍しておき、朝に必要な分だけ持っていく。
それを昼休憩を取るときにレンジで温めて食べる、というものでした。
時間的にも金銭的にも、自炊する余裕はありませんでしたし、いくらブースがショッピングモールだからといって弁当やカップラーメンを毎日買うのも費用がかさみます。
もちろん、完全に毎日これだけという訳ではありませんでしたが、極力食費などの削れる部分は削って行かないと毎月親に都合してもらわないといけないくらいでした。
他人の金遣いが気になり始める
ない袖は振れないので、何とかできる範囲で毎日の食事をしのいでいこうとしていたところ、なぜかこともあろうにそれをチャカしてくる連中がいました。
「今日のおにぎりでかいっすねwww」
「あれ?今日はおにぎり持ってきてないんですか?ww」
こちらがいくら流しても止めないので、少々本気で止めてくれと抗議してもおかまいなし。
なんなら社長もこちらが嫌がってることが伝わっていないのか、天然なのかそれに乗っかってくる始末。
「ネガティブな発言はNGでも他人が嫌がってることをするのは良いのか。」
ただでさえお金にも気持ちにも余裕もないにも関わらず要らぬ冗談を入れてくる彼らに、本気で嫌気がさしてきていました。
そういった事情があるにも関わらず、よく同じ店舗でブースをしていたこの仲間たちは普通にタバコを吸ったり、毎朝200~300円するエナジードリンクを飲んだりしていました。
普通であればそんな些細なことは目にもつかないのでしょうが、この時はやはり精神的にも参っていた頃でもあったので、どうしてもそういった「他人の贅沢」が気になりだしていました。
とはいえ、私と比べて営業成績もそう大きく変わりはなさそう。
そこで少し探りを入れてみると、どうやら実家暮らしだったり兄弟の家を間借りしていたり。
もちろん、全く生活費を払わずに報酬をすべて自分のために使ってはいないのでしょうが、なんだか勝手に自分を追いつめて空回りをしているのは自分だけのような気もしてきた出来事でした。