自由度の低い業務委託
転職(業務委託だけど)した会社で働きはじめてしばらく経った時、信頼していた先輩が突如いなくなった。
何事もなかったように誰も触れない。まるで初めからいなかったかのような振る舞い。
それから数日してその先輩が辞めたんだと確信してからは、心の中の暗雲が日に日に増していきました。
契約1件あたり3,000円の完全歩合、業務委託であるが故の残業代などない長時間労働。それを乗り越えた先にある「オーナー(社長)」という名の「人参」。
それはもはや砂漠をさまよっているときの「蜃気楼」のようなもので、その先輩にしても同じような気持ちだったのだろうと共感するのは容易でした。
もちろん「他人のことは関係ない。自分達は自分達の人生を生きている」というようなポジティブな気持ちに置き換えれば、同僚の一人や二人辞めたところで何も意に介さないのかもしれません。
それでも実際、たった3~4か月働いただけで、いつの間にか私自身も古株に。
1ヵ月あたり数人は新しく入ってくる人がいるものの、一か月はおろか一週間も経たずいなくなっている。
「まぁ、この仕事は正直生半可な気持ちでは続かないよね。」そういう気持ちも確かにありましたが、まさか信頼していた先輩がいなくなるとは思っていませんでした。
しかし、そう沈み込んでばかりもいられません。
「そもそもついて行けるのは一部の人だけ。その中で成功するのはそれよりもほんの一握りの人だけ。」
そういう気持ちを無理やりでも持って仕事に臨まないといけません。
なにより、自分もなんとか生活費を稼ぐことを続けないといならない。
ただ、この頃から「ブースだけで呼び込みをして営業をする」ということに少し限界を感じていました。
いくらショッピングモール等の人が集まる環境とはいえ、あくまでもブースは固定配置なのでそこから範囲を広げることもできず、平日や閑散期になると人通りもまばらになります。
生活を安定させるためなら、なんなら週休一日も必要ない。
まずはきっちりと安定した成果を上げるために少々の無理をしたっていい。
そういう思いから、
「個人だけを対象にするのではなく、せっかくオフィス街なのだから法人や店舗を対象に営業をするのはどうか。」
と社長に伝えた(もちろん「売れないから」というネガティブなものではなくもっと成果を伸ばすため、というポジティブな言葉として)ところ、
そういった理由で自分の考えはやんわりと断られました。
その当時は「業務委託契約」というのはほとんど知識がなかったのでそのまま刀を鞘に納めましたが、働く場所・やり方を制限されていて、かつ拘束時間が決まっている。
この環境を一般的には「時間給の労働」と呼ぶのではないかと思います。
しかしこの時はここまでの疑問を持つことはなく、また交通費を自腹で払い、遠方のブースへと出かけていきました。
出費を抑える為の施策
またこの頃、冗談でもなんでもなく、本当にお金がありませんでした。
酒などの嗜好品はもちろん、そもそも食費から服飾費・日用品に至るまで、使えるお金は固定費を除くと一日500円もありません。
しかしながらブースの準備は力仕事だし、普段も立ちっぱなしであったりしてエネルギーを使います。
どうしてもお腹も減ります。
幸いなことに私の祖父母の家で自分達で食べる分のお米を作っていたので、米だけはありました。
米だけでも食べていれば少なくとも腹持ちはします。
また、ブースは基本ショッピングモールやホームセンターなので、食事をとるときは従業員用のバックヤードがありました。電子レンジもあります。
ただ、もちろんおかずはありませんし、夜帰るのは21時から22時過ぎ。朝は6時には起きて家を出ないと7時のミーティングに間に合いません。
そこで、塩にぎりや100円で買えるおにぎりの素を買ってきて米を五合炊いて混ぜ、ラップに包み冷凍しておき、朝に必要な分だけ持っていく。
それを昼休憩を取るときにレンジで温めて食べる、という方法で節約することにしていました。
そうすれば、材料費だけで1食20~30円で済みます。
時間的にも金銭的にも、自炊する余裕はありませんでしたし、いくらブースがショッピングモールだからといって弁当やカップラーメンを毎日買うのも費用がかさみます。
もちろん、完全に毎日これだけという訳ではありませんでしたが、極力食費などの削れる部分は削って行かないと毎月親に都合してもらわないといけないくらいでした。
他人の金遣いが気になり始める
ない袖は振れないので、何とかできる範囲で毎日の食事をしのいでいこうとしていたところ、なぜかこともあろうにそれをチャカしてくる連中がいました。
今日のおにぎりでかいっすねwww
あれ?今日はおにぎり持ってきてないんですか?ww
あのでっかいやつwww
今日もおにぎり絶好調ですねww
そんなにおにぎり食べるんですか?wwww
こちらがいくら流しても止めないので、少々本気で止めてくれと抗議してもおかまいなし。
なんなら社長もこちらが嫌がってることが伝わっていないのか「楽しそうにしている」と見えたのか、時折それに乗っかってくる始末。
「ネガティブな発言はNGでも他人が嫌がってることをするのは良いのか。」
ただでさえお金にも気持ちにも余裕がない状況の中、要らぬ冗談を入れてくる彼らに本気で嫌気がさしてきていました。
そういった事情があるにも関わらず、設営や休憩時に人がいなくなることを避けるためブースは極力2人組となっており、彼らともよく一緒にアサインされました。
この仲間たちは不思議なことに、営業成績も私とさほど変わらないにも関わらず普通にタバコを吸ったり、200~300円するエナジードリンクを毎朝飲んだりしていました。
普通であればそんな些細なことは目にもつかないのでしょうが、この時はやはり精神的にも参っていた頃でもあったので、どうしてもそういった「他人の贅沢」が気になりだしていました。
そこで少し探りを入れてみると、どうやら実家暮らしだったり兄弟の家を間借りしていたり。
もちろん、全く生活費を払わずに報酬をすべて自分のために使ってはいなかったのだろうとは思いますが、可処分所得で言えば私よりも余裕があったのは明らかでした。
そう思うと、なんだか勝手に自分を追いつめて空回りをしているのは自分だけのような気もしてきた出来事でした。